『シュンペーター』岩波新書 伊東 光晴, 根井 雅弘 著

■新結合イノベーションとは何か

・マーシャル「自然は飛躍せず」=「有機的な成長」→力学的アナロジー=静学的均衡、生物学的アナロジー=動学的均衡の概念を得る

シュンペーター「新結合」=「非連続的な飛躍」→「郵便馬車をいくら連続的に加えても、それによってけっして鉄道をうることはできないであろう」

・生産的諸力には、物質的(労働・土地)と非物質的(技術・社会組織)がある。静態的経済において所与であった後者の要素において、「新結合」が起こることに着目したのが、シュンペーター

 ・スミス=ミル=マーシャルの体系においては、経済は、「樹木のように」有機的に成長する。外的要因にたいしても、受動的反応あるのみ。それに対して、創造的反応こそ、資本主義・企業家の本質。

・生産過程とは、生産諸力の結合。それに対して、新結合とは、生産諸力の結合の変更。つまり、生産手段の転用が大事。そして、この生産手段の転用をファイナンスするのが、「銀行の信用創造」。従来、重視されてきた、人口の増加・節倹による貯蓄の増加ではなくて、「銀行家」こそ真の「資本家」であるとみなす。

・企業家と単なる経営管理者との峻別。あるいは、新結合を推進するもの(企業家)と信用を創造するもの(資本家)との峻別。

景気循環

・第一次接近:好況→不況:均衡ないし均衡の近傍から出発、「新結合」を経て、景気の拡大、縮小をへて、あらたな均衡ないし均衡の近傍へ

・第二次接近:好況→景気後退→不況→回復:投機の要素、楽観・悲観の行き過ぎといった誤謬の要素、企業者以外への信用供与がおこなわれること、が第一次と異なる。

・第三次接近:三波動図式(コンドラチェフ波動50〜55年、ジュグラー波動8〜10年、キッチン波動40ヶ月)

ケインズとの比較

・資本主義の本質とは、企業家が新結合の遂行によって、生産関数を絶えず変革していくこと。→供給サイドに重点、長期

・しかるに、ケインズは、人口・技術・資本設備など生産関数が与えられている短期を想定した。そこから、有効需要の原理が導き出される。→供給サイドより需要サイドに重点、短期

■資本主義衰退論

・資本主義は、自らの成功そのものがそれを衰退させる要因を作る。

帝国主義

帝国主義と資本主義の区別。自由主義自由貿易としての資本主義は、必ずしも、帝国主義的にはならない。

オーストリア人として、シュンペーターは、ドイツの帝国主義化を批判した。

・ザールの鉄鋼業と東エルベのユンカーとの利害対立・内部矛盾が、ねじれた形で、外部への侵略を生む。封建的制度の残滓。

保護貿易カルテル・トラストの形成→ダンピングと資本輸出をテコにした闘争→帝国主義の定着

・世界市場の再分割、イギリスの植民地無用論からの、1872年、ディズレーリの政策転換、などの契機を見失った議論に。→イギリスの自由主義の伝統を持ち上げすぎた

・商業銀行のイギリス、金融資本のドイツ

・「社会帝国主義」=プロレタリアート帝国主義を望んでいる→アフガニスタンポーランドへのソ連の侵攻