2004-05-01から1ヶ月間の記事一覧

小此木啓吾『フロイト思想のキーワード』

ラカンに続き新書本を読む。フロイトの復習にはもってこいの本だ。重要なキーワードのエッセンスだけを、小気味よく羅列してある。いくつかの発見と、いくつかの概念を再確認できた。・フロイトの誠実さ「そして私は、あのフロイトの学問的な真理を追求する…

島尾敏雄『死の棘』を読む

稀有な作品。「もう絶対ダメだ!」と思ったことも、しばらくすると「なんてことなかったな」と相対化できてしまうことがある。そして、絶望的な気分にとらわれていた自分が、馬鹿みたいに思えて、ふっと可笑しくなりもする。 こうした絶望→希望→絶望→希望の…

市野川容孝『身体/生命』

こちらは、フーコーの「生−権力」を、西洋近代医学の系譜を辿りながら解説したもの。ただし、ビシャやピネルなどの著作に直接当たることで、フーコー自身をも批判し、そのプロジェクトを先に推し進めようという意図もこの本には込められている。王の身体の変…

新宮一成『ラカンの精神分析』

入門書としては、なかなか良い本。ラカンの理論が、自己言及のパラドックスに依拠して構築されていることがよくわかった。それゆえに、強固な論理的一貫性を持つ。つまり、手強い。だけど、何でもかんでも対象aや黄金比でもって説明できてしまうのが、ちょっ…

アガンベン『アウシュビッツの残り物』を読む

恐るべき書物。だが、私的にも公的にも、避けて通れなくなるだろう。まだまだ読み込みが足りないが、一つメモを。「恥かしさとしての主体」という考えは、最高にして最低な素晴らしい発想。鵜飼さんが、ドゥルーズとジュネの美学に触れて、「恥かしさ」ある…

授業とテスト

テストの出来は、OKラインか。それよりも、復習することがやはり大事だとさとる。まとめて復習する時間を取ろう。

安部公房『砂の女』を読む

よくできている。でも、それだけという感じがするのは、なぜ?砂の、無節操なまでの、流動性。砂の穴での、窮屈なまでの、定住性。この両者の対比に、さらに、個―共同体―国家の枠組みがかぶせられる。つまり、個人は共同体にたいして被害者意識をもつが、共…

東浩紀氏のサイトで

重要な発言がなされている。 そのような状況で、もし現行の著作権法が100万人もの人間をいつでも犯罪者にすることができるようなものなのであれば、そんなのは法律のほうが間違っているに決まっています。 わたしも上記の意見に賛成します。ネットがもらたし…

渋谷望『魂の労働』読了

よくできたデッサン、それも力強い線で的確に描かれたような。「規律訓練から管理社会への移行」は、どのように現象しているのかを描写すること。「労働」は、フォーディズムからポストフォーディズムに至り、どのように変質したのか記述=分析すること。そ…

深沢七郎『楢山節考』を読む

今村昌平による同作品の映画を見て、強烈な印象を受けた記憶がある。生々しい生と性。アンチ・ヒューマニズム。そういったものが、リアリスティクな映像から強烈に発散されているので、打ちのめされた。小説の方は、歌物語を取り入れたシンポリックな近代小…

三島由紀夫『仮面の告白』

偽者と本物。仮面と素面。演技と自然。これら二項の差異を撹乱すること。近代文学の宿命である「告白」という制度を逆手にとり、ほとんどキャッチュな形象とレトリックでもってゴテゴテと飾り立てた文体で、ついには、その告白が「本気」なのか「演技」なの…

渋谷望『魂の労働』をさわりだけ読む

この本は、上記のフーコーの権力論を受け継ぎ、管理社会の批判へ向けて深化させようという労作。第一章「魂の労働」について。「感情労働 emotional labor」の重要性がよくわかった。ネグり=ハートの『帝国』でも出てきていたが、その意味を理解できた。 「…

フーコー『監獄の誕生』を読む

規律訓練の社会から管理社会に移行しつつある。これが、ドゥルーズの予言でもあり、遺言でもあった。「君達の先輩が苦労して規律の目的性をあばいたのと同じように」、管理社会について若者よ、たゆまず思考し、その欺瞞を暴けという言葉をわたしは胸に銘記…

稲葉振一郎『リベラリズムの存在証明』を読む。

理論が、生々しい。それが、なにより凄い。『波状言論5,6号』で東浩紀は、「リバタリアン的土台の上に複数のコミュニティが乗っかっている」というのが現在の社会だと言う。また、北田暁大は、「リベラリズム」とは、そのコミュニティ間の移動の自由に関わ…