花田清輝『復興期の精神』を読む

こちらも、すごい。レトリックが、すごい。

ヒューマニズムへの懐疑。単純な本質主義への批判。リニアな発展よりも、渦巻状の展開を、あるいは円よりも、楕円の軌道こそが、よりラディカルなのだと主張する。

はじめから終わりへと、目的−手段の関係で物事は進んでいくのではなく、一挙に終わりから始めて、終わりからはじめへと逆行し、そしてそこからイノチガケの再生を図るべきだと主張する。

ルネッサンスは決して、光あふれる明るい時代だったのではない。むしろ、暗黒の中世と明快な近代の間で引き裂かれていた時代なのだ。その暗から明への転形とそのプロセスこそ、ルネッサンス(復興期)から学ぶべきことなのだと、花田は言う。

なぜなら、それらが「転形期」の生き方なのだ、と。

この転形期という考えは、後にアバンギャルド芸術という実験の擁護へとも繋がっていく。なぜなら、実験こそ、必死になって、転形期に試みられるべきものだからだ。

こレトリックの濫用は、戦中期の検閲を逃れるためのスタイルでもあったが、「イエスは、レトリックの人であった」というところなど、彼の本来的なスタイルでもあったのか。


いずれにしろ、二冊とも、じっくりと再読したい本。とても問題的な本だと思う。両冊とも。