現代思想の冒険者たち 三島憲一『ベンヤミン』

ベンヤミンは、とても好きだ。「翻訳者の使命」「暴力批判論」「歴史哲学テーゼ」などは一読して、その難解さや神秘的な傾向にとまどいながらも、強く魅きつけられたのだった。

解説書にしてはボリュームもある。内容も悪くない。しかし、ベンヤミンは、まだまだわからないところが多く残る。

不可能性への投企(=ロマン主義)への抵抗として不可能性の下への滞留(=メランコリー)。メランコリーの深みに沈潜しつつも、はるか天上の世界のメシア、或いはその周囲を飛び交う天使の群れを待望することをやめない。この過去と未来への眼差しの分裂が、破壊的な・救済的な批評を可能にする。断片は断片としてきらめき、瞬間的に「真理」を開示する、その瞬間を直感するのだ。しかし、その真理は、つねにすでに神話や記憶や過去の死者たちの夢を担わされ、きしんでおり、その軋みに耳を傾けることだけが、私たちに生者に許された至福/憂鬱である。