『論争・デフレを超える』ブルームバーグ・ニュース/日高正裕編著

経済と金融と政治の相互関係と複雑さ。特に、金融、財政、為替、国際関係が複雑に絡み合う様がよくわかる。論者の力点の置き方によって、様々な現状分析や提案が成立することが、おもしろい。

バブル期に過剰な設備投資を行ったことが、過剰な供給能力をこの国にもたらし、その結果、バブル崩壊後のデフレが出現した。そして、賃金の下方硬直性がネックとなり、また日本独自の雇用慣行や規制(終身雇用・間接金融・護送船団方式)ゆえに、問題が長期・複雑化した。

ここまでは皆同じ認識をもつ。しかし、そこから先が、論者によって、異なる。円安誘導、インフレターゲット公的資金の注入、財政政策、日銀による国債や株式の買取り、ミクロ構造調整、技術革新、国際的な分業体制の変化、社会投資ファンド、外債購入、政治力の欠如、インフレ期待の醸成、自然との共生を目指す経済、ものづくりの再発見、豊かさはGDPでは測れない、などなどが「デフレを超える」ためのキーだとして提示される。これだけあると、目が回りそうだ。

2004年6月現在では、昨年末からの中国特需やハイテク関連の好調により景気回復しつつあるかに見えるが、デフレはいまだに解消されていない。それは、どう説明されるのだろうか。