プイグ『蜘蛛女のキス』

物語を物語る物語。物語の政治性と政治の物語が交錯する物語。「性」と「政」の、幸せな結婚はありえないという物語。プライベートとパブリックな領域は、どんな形できりむすぶのかを考えさせる物語。(それは順接、逆接、交錯、あるいは錯乱?)
 60年代後半から70年代に提起された以上の問題は、いまだに解けない謎のままにとどまっている。というより、「性」と「政」はいつだってねじれている。そららにハッピーエンディングはありえない。だから、アンハッピーエンディングが必要なのだ。とりあえずの終わりを確定するために。

 しかし、それらの幸せな結婚という夢はなくなりはしない。切ないながら、夢は見られ続けてきたし、これからも見られ続けるだろう。

 切ない夢は、その切なさゆえに救われる

 のだろうか?

 プイグ。