新宮一成『ラカンの精神分析』

入門書としては、なかなか良い本。ラカンの理論が、自己言及のパラドックスに依拠して構築されていることがよくわかった。それゆえに、強固な論理的一貫性を持つ。つまり、手強い。だけど、何でもかんでも対象a黄金比でもって説明できてしまうのが、ちょっといただけない。ヘーゲルの絶対精神、つまり特殊と普遍の一致を裏返しにしたものが、対象aだとしたら、それも当然か。
 「四つの語らい」もとても興味深い。特に、科学する主体と精神分析の登場が、ある種の必然性を持っているとする考えなどが。

 ラカンの理論は、色々と問題があるようだけども、思考を触発してくれるのは確か。後は、ラカン自身の著作に当たってみよう。